
2020年5月31日
今日は消費者金融銘柄のアコム(8572)とアイフル(8515)について語っていこうと思います。
私は最近、アイフルの株を購入しました。
過払い金問題も収束しつつあり、増収増益傾向の業績もあり株価が上向くのでは?
と考えたからです。
ただし、
どれだけの強気で挑むべきか?
株価が下がればナンピンするのか?
といった詳細までは検討することができていません。
コロナショックによる割安感、5月11日発表の来期増益見通しによる上昇、そして押し目到来(?)というチャンスもあった為、やや足ばやに購入してしまったのも事実。
そこで今回、消費者金融業界の動向、アイフル、そして競合会社アコム、コロナショックの影響などを踏まえつつ、自らの相場観の足固めをしていきたいと思います。

なお、消費者金融業界に詳しくない方もいると思います。
ということで、過去から現在まで振り返り、将来を考えていこうと思います。
消費者金融業界の過去~現在
過去の消費者金融は「お金に困っている人に高利で貸し付ける」悪徳業者ばかり。
審査も緩く、ガンガン貸し付ける為、
多重債務に陥り自殺を選択してしまう人が急増、社会問題化しました。
例えば、警察庁の統計によると、2006年(平成18年)の自殺者数32155人について多重債務などの経済苦が原因とみられる自殺者は約8000人とされている。また、2005年(平成17年)における大手5社利用者の自殺は判明しているだけで3649件であった[注 2]。20歳以上の死亡者に占める自殺者の割合は2.8%(人口動態調査05年、厚生労働省)であるのに対して、金融庁などによると、大手5社利用者の死因判明分に占める自殺率は25.5%であった。 wikipediaより
これにより、貸金業法が改正されるなど、業界全体に厳しい規制が入ることになります。
消費者金融と過払い金問題
消費者金融会社に一番大きな影響を与えたのは、
グレーゾーン金利の撤廃と、過払い金の返還です。
かつて貸し付ける場合の上限金利は2種類ありました。
(出資法上限29.2%、利息制限法20%)
消費者金融は出資法上限29.2%で貸し付けを行っていましたが、
最高裁は「20%を超える利息分(グレーゾーン)は無効、過払い金は返還せよ」と、判決。
以降、各消費者金融は多く受けとっていた利息を返還することに。
その他、厳しい規制もあり、淘汰・業界再編が行われ、
消費者金融中心の上場企業はアコム(8572)、とアイフル(8515)の2社のみ。
※他は銀行の完全子会社となり上場廃止。会社更生法適用等で廃業等
過払い金の返還で業績が大きく悪化
最高裁の判決により、過払い金返還を開始。
どれだけの影響を与えたのか?
上場企業2社の過払い金関連の費用をグラフ化しました。
※各社決算短信、利息返還損失引当金、利息返還損失引当金繰入額を参照し計算
アコムの過払い金支払推移
アコムは2020年度に344億円。
2012年からの累計では6,024億円もの影響を与えています。
ただし、順調に右肩下がりですね。
アコムの2020年3末時点の純資産は4,424億9600万です。

もし過払い金問題が無ければ、単純に考えて純資産は倍になっていても良かった。非常に大きな影響を与えたと分かりますね。
アイフルの過払い金支払推移
アイフルも間近2020年度は149億円。
2012年からの累計では2,804億円の影響を与えています。
ちなみにアイフルの2020年3末時点の純資産は1,289億3100万です。

アイフルなら単純に考えれば資産は3倍に増加。
こちらも影響は非常に大きい。
過払い金請求の時効は10年
このように消費者金融各社に大きな影響を与えた過払い金問題。
実は“最後の取引”から10年以上経過すると時効です。
グレーゾーン金利の改正は2010年6月18日施行。
単純に考えれば2020年6月に時効が成立します。
ただし、“最後の取引”というところがミソで、
2020年6月以降、過払い金請求が0件になるかといえばNO。
もし、施行前に契約したローンを施工日以降も支払い続けていた場合
その返済が終わった期日から10年となります。
また、過払い金は5%の利息を上乗せで回収することが可能です。
この為、期限ギリギリまで回収しない人が現れます。
事実、2020年度のアイフルの過払い金費用が前年比20億円増となったのは、
期限が近くなった為に過払い金請求をした人が多かったと考えられます。

とはいっても、既にほぼ終わったも同然。過払い金という足かせが外れた各社の業績は大きく向上するでしょう。
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過払い金の影響を分かりやすくした業績推移
さて、それでは各社の業績推移を確認しましょう。
ただし、各社の売上、利益の推移を単純にグラフ化したとしても、
利息返還損失引当金繰入額が毎年を異なる為、
正確な業績推移をとても確認しにくい。
試しに決算資料より、売上、利益を”そのまま”グラフ化した資料を見てみましょう。
アイフルは2015年に大きな赤字を出していることが分かりますね。
が、これは向こう数年分の利息返還損失引当金繰入637億円を一括計上した為。
将来発生しうる費用を前倒し計上した為の大赤字です。
これだと、前後の純利益と比較して、
2015年度が好調だったのか、不調だったのかわかりにくい。
そこで次のように手を加えることで、各社の業績推移を作り直します。
利益+利息返還損失引当金繰入-引当金の取り崩し額=正味の利益

会計学のことを知らないとちょっと難しい内容かも。でも分からなくてOK。要は次のグラフを見れば各社の正確な業績推移が分かるということです。
過払い金費用を平準化した業績推移
ではまず、アコムから見ていきましょう。
過払い金費用が減少していくに連れて、修正利益が急上昇。
プラ転は2016年度。間近では利益率16.1%相当の業績を叩き出しています。
引き続き、過払い金費用が減少することで利益率は高くなりますね。
続いてアイフルを見てみましょう。
アイフルも改善がみられるものの、アコムと比べると見劣りします。
2016年、2017年は過払い金問題以外で大赤字。
プラ転は2019年度。間近の利益率は2.7%です。

過払い金問題以外でアイフルに何が起きているのか?
調べる必要がありますね。
両社の違いをより分かりやすくする為、
過払い金の影響を0にしたグラフを再度作成します。
過払い金費用を0した業績推移
アコムは概ね利益率27%程度で推移。
2014年を底に”ほぼ”6年連続増収増益です。
対してアイフルは2016年を契機に、利益率が低下。
最近は14%~18%程度の利益率になります。
2018年以降は売上を伸ばし、利益率は改善中。
来期も増収の見通しの為、さらなる改善は続くものと見れます。

が、2016年に何があったのかは気になる所、後から調査します。
先に業績と株価の推移を比較してみましょう。
各社の業績と株価を比較
それでは各社の業績と株価を比較し、関係性を調査します。
まずはアコム。
決算利益・・決算書そのままの利益
3末株価・・3月末日の終値。 PBR・・株価純資産倍率(時価総額÷純資産)
2011年~2017年にかけて株価は修正利益と相関しています。
過払い金費用が減少し、利益が増えれば株価が上昇すると分かります。
ただし、2017年以降、業績が回復しても株価が上昇しないという事態へ。
2018年期末には長く続いた無配も終わり、配当復活したのに・・?
なぜ、業績と株価の相関が崩れた?
考えられる理由は2つ。
2・PBRが高すぎた為、一旦調整された。
1・消費者金融業界への将来の見通し低下
2017年というと、銀行カードローンの厳格化が進んだ年です。
2010年の改正賃金法の施工により、消費者金融業者は年収の3分の1までしか貸すことができない総量規制が導入されたものの、銀行は適用外。
銀行は消費者金融並の金利でガンガンお金を貸し付け、その”保証を消費者金融各社に依頼”するというビジネスモデルが成立。銀行、消費者金融共に「WinWin状態」。
その時のカードローン残高の推移はこちら。
驚くほど急成長していますね。
消費者金融の次はカードローンが社会問題化。
さすがにこれはダメでしょう、と。
年収証明書の提出や、会社への在籍確認実施など規制が進んだ年、
それが2017年です。
これが消費者金融業界の見通しを悪化させ、
アコムとアイフルの株価を押し下げた可能性が高い。
ただし、消費者金融側から見ると、
「銀行カードローンが駄目ならうちにおいでよ( ´∀`)ゞ イラッシャーイ」
なので、実際は業績への悪影響は軽微。
事実、アコムもアイフルも2018年度の売上が急増しています。
2・PBRが高すぎた為、一旦調整された。
“PBRが高すぎた”のも原因だと推測します。
アコムの場合、もし過払い金問題が無ければ、
単純計算で8年で純資産が2倍になっていた。と紹介しました。
アコムのPBRはピーク時2.79倍なので、流石に高すぎじゃないの?という調整が働いた可能性があります。
また、低出来高、その間、注目されていなかったのも原因だと思われます。
丁度赤枠の箇所です。
出来高が減少し、ボラティリティも低下していることが分かります。
対して間近では出来高が増加中。

注目度が上がり、2013年~2016年の時の出来高、値動きのように、これからアコムの株価が大きく見直されるかもしれませんね。
では次にアイフルを見てみましょう。
アイフルも同じく、2017年以降、業績と株価の相関が崩れています。
それまでは業績が改善すれば株価が上昇し、悪化すれば下落傾向。
※ちなみにアイフルは未だ無配状態
こちらも低出来高が影響していると推測します。
アイフルも同期間の出来高は低下し、注目度が下がっていたことが分かります。
これが原因だとすれば、間近で出来高が増えつつあるのは好ポイント。
アコムと同じく株価の見直しが行われる可能性大。
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今後の配当金はどうなる?
アコムは2018年の期末から配当金の支払いを開始。
これまでの推移は次の通り
2019年 通期2円 利回り0.51%
2020年 通期4円 利回り0.87%
2021年 未定
決して高い水準では無いので、現状では利回り目当てで保有は難しい。
ただし、過払い金問題前の2009年は1株辺り70円の配当を実施しており、純資産配当率は2.4%。もし、今の純資産で配当率2.4%であれば、利回りは通期で9円~10円。
配当利回りは2%前後の水準になります。
つまり、まだまだ利回りは上昇すると考えることができます。
ちなみに復配が決まったのは2018年4月20日。
その時のチャートの様子がこちらです。
銀行カードローンの規制問題もあり、地合いが悪い中での好材料。
残念ながらトレンドを変化させるほどのインパクトは無かった様子。

アコムが復配した時の利益率を考えれば、アイフルもそろそろ復配しそうです。賃金業法改正から10年という節目も踏まえれば話題性はあるものの、市場の反応が気になりますね。
コロナショックの影響
最後にコロナショックの影響を見てみましょう。
コロナショックによる株価暴落と戻し
暴落前の2020年2月21日を起点に、
各社の株価がどれほど下落、戻したのかグラフ化します。
見て分かる通り、アイフルの方が暴落率が高く推移し、
業績好調のアコムの方が軽微であったと分かります。
ただし、5/12を境に逆転、アイフルの株価がアコムより戻します。
原因は「5/11の引け後に発表されたアイフルの来期業績予想の大幅増益見通し」です。
来期は営業収益1391億円(前期比9.5%増)、営業利益199億円(同11.9倍)
大幅な増収増益が好感され、株価が上昇。アコムを越えます。

ただし、ここまで読まれた方なら分かるとおり、業績はアイフルよりもアコムの方が優秀。好材料による一時的な逆転現象かもしれません。
コロナショックの業績への影響
では、次に最新の月次データを使い、
どの程度コロナショックの影響があったのか?
数字を見ていきましょう。
両社を比較すると、アコムは営業債権が減少し、新規顧客が前年同期比37.2%減。
対してアイフルは営業債権は変わらず増加、新規顧客は前年同期比20.9%減。
アイフルの方がコロナショックの影響が小さい。
またアコムの営業債権はどちらかというと横ばい。
アイフルは順調に増加していることが分かります。

こうしてみると、コロナショックからの戻し率がアイフルの方が高いのも納得できそうです。
新規顧客の獲得件数が減少したにも関わらず、営業債権が大きく減少しない。
これは既存顧客1人辺りの借入金が増加したと推測できます。
コロナショックは消費者金融業界に追い風かもしれませんね。
このように考えると、
コロナショックにより売られたアコム、アイフルの暴落は過剰反応。
過払い金返還も、2020年3月がピーク。
ギリギリまで利息返還を伸ばしていた人達がついに請求を終えた様子が分かります。
今後、業績が向上していくのは間違いなさそうです。
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アコムとアイフルの株。どちらを買う?
好業績、高い利益率を維持するアコム。
コロナショックに強く、今後復配の可能性があるアイフル。
どちらを買うべきか?
を考える前に、調査を先延ばしにしていた
「なぜアイフルの利益率が2016年以降低下した理由」
過去10年の損益計算書をエクセルにまとめ、調べると
致命的な原因は無く、複数の原因によって利益率が低下したと分かりました。
・販売促進費及びその他が20億~40億前後増加
・共同出資していたビジネクスト株式会社の合弁解消
・為替差益16億~22億減少 など
アイフルに特別不安材料が見つからなかったのは安心できたとしても、
アコムとの業績の差は正直歴然。

おそらくコロナショックからの回復はアイフルが早いものの、より長期で見ればアコムの株価が上昇するでしょう。
私は既にアイフルを購入しています。
様子見つつアコムに乗り換えるか、アコムの株を追加購入するかもしれません。
今回は以上!最後までありがとうございました。