移動平均乖離率を利用した逆張り手法
今日のテーマは移動平均線から大きく乖離した銘柄を逆張りし、短期的な戻りを狙って売買する「移動平均乖離率×逆張り手法」です。
この取引手法はスキャルピング、デイトレーダー、そしてスイングトレーダーといった短期売買主体のトレーダーに有効です。
移動平均乖離率とは?
移動平均乖離率とは移動平均線に対し、株価どれだけ下がっているのか?もしくは上昇しているのか?分かり易く数値化したものです。
大きく乖離した株価は平均値に近づこうとする力が働く。これを狙い撃ちするのが乖離率を利用した逆張り手法です。
例)25日移動平均線から乖離率が大きくなったタイミングで反転
どうして乖離率が高くなると反転するのか?
移動平均線から大きく上に乖離した株価は「既に株を保有しているトレーダーの利益確定注文」、「天井を予想した逆張り注文」により売り圧力が高まり、徐々に下落します。
ひとたび下落に転じれば、お祭りムードは終了。
場合によってはこれまで上昇狙いで注文していたトレーダーが手のひらを返し、下げトレンドへと転換することもあります。
この転換ポイントを狙い撃ちするのに移動平均乖離率を使用します。
乖離率の目安は変化する。
ではどの程度乖離すれば、反転するのか?
目安値は使う移動平均線の期間、チャートの時間軸、地合い、トレード対象によって異なります。
・移動平均線の期間(25日、75日等)
・チャートの時間軸(週足、日足、1時間足等)
・地合い(上昇トレンド、下落トレンド等)
・トレード対象(個別株、為替、日経平均等)
例えば、個別株の移動平均乖離率を日足のデータを使って調査。すると25日移動平均線から20%離れた場所から反転することが多いと分かったとします。
移動平均線の価格が1000円なら、株価800円or1200円ですね。
では1時間足でも同じなのか?というと、そんな短期間で移動平均線の価格から20%も動くことは基本あり得ないです。
1時間足の場合、5%程度を乖離率の目安にする。なと状況によって変更しなければなりません。
例)1時間足の移動平均乖離率チャート
また以外と見落としがちなのが、トレード対象です。
個別株と比べれば、日経平均株価といった指数は複数の銘柄の平均値の為、急落、急騰がどうしても穏やかになってしまいます。よって、キツイ乖離率はそもそも発生しにくいのです。
例)日経平均株価の移動平均乖離率
ドル円といった為替レートも同じ。短い期間で個別株のような激しい値動きは発生しません。1日で動く価格はせいぜい1%前後。ちなみに、取引する各通貨によって目安となる移動平均乖離率を変更すると尚良いでしょう。
移動平均乖離率を利用してトレードする場合、移動平均線の期間、チャートの時間軸、トレード対象などを十分に学ぶ必要があります。
ここでは、それぞれのトレード対象に、どのような目安でもって取引すればよいのか?一例を参考までに紹介します。
逆張り時の乖離率の目安
私ならどの程度の乖離率で勝負するか?一例をまとめると次の通り。
※ちなみに私は75日移動平均線の乖離ではなく、25日移動平均線の乖離率を利用しています。なのでこちらの表も25日移動平均線を使った場合になります。
乖離率目安一覧表
株取引
地合い/時間軸 | 日足 | 1時間足 | 1分足 |
レンジ相場 | 10% | 5% | 0.5% |
トレンド相場 | 15%~20% | 8%~12% | 0.8%~1.2% |
日経平均先物取引
地合い/時間軸 | 日足 | 1時間足 | 1分足 |
レンジ相場 | 5% | 2.5% | 0.1% |
トレンド相場 | 10%~15% | 5%~10% | 0.2%~0.3% |
FX(ドル円)
地合い/時間軸 | 日足 | 1時間足 | 1分足 |
レンジ相場 | 2% | 0.5% | 0.02% |
トレンド相場 | 3%~5% | 1%~1.2% | 0.03%~0.05% |
この乖離率目安表、また相場の地合いによって反転しそうなときはエントリー、相場の地合いが非常に悪い時は見送りですね。
迷ったらエンベロープを活用しよう。
もし、先ほどの目安表ではなく、自分で判断したかったり、それでもまだ迷う場合、チャートにテクニカル指標の1つである「エンベロープ」を表示させることをオススメします。
エンベロープは移動平均線に対し、設定した乖離率を上下に描画することが可能です。
チャートで見ると非常に分かり易いです。
例)個別株の日足チャートへ、±10%で設定したエンベロープ表示
エンベロープの乖離率は自由に変更可能です。過去の値動きとぴったり合う乖離率へと変更すれば、どの時間軸を使おうが、どんなトレード対象であろうが、適切な乖離率を判断することが可能です。
ちなみに私は過去のロウソク足データをエクセルに出力し、統計を取り、反転するだろう目安値を探ったことがあります。結果から言えば意味ありませんでした。
というのも、ただデータ分析しても、その時の「地合い」が全く考慮されていないんです。
例えば米中貿易摩擦が注目された時はいつもより、株価は大きく乖離する傾向があります。逆に、平和な時の乖離率は小さくなる傾向があります。
すべてのデータをまるっと統計をとっても、地合いが混在しており、「今の地合いに合った乖離率はどれくらいなのか?」というデータを導き出すことはできませんでした。
チャートにエンベロープを表示させ、「ふーん、この時は〇〇%も乖離したんだね」というように「見る」方が正しい判断ができます。
仮にシステムトレーダーであれば、移動平均乖離率とボラティリティデータを組み合わせ、相関性を考慮しつつ最適な目安値を導き出し、トレードを自動化することも可能でしょう。
人間がそれを頭でやろうとするとフリーズします(苦笑)
移動平均乖離率のまとめ
以上、移動平均乖離率を使った逆張り手法についての解説でした。
ちなみにこの手法を極めた有名な個人投資家がBNFです。BNFは7年で資産160万円から175億円に増やした実績があります。
画像:ダイヤモンド ZAi (ザイ) 2007年 10月号より
彼は次の書き込みを掲示板に残しています。
812 :B・N・F ◆mKx8G6UMYQ :04/10/03 16:40:18 ID:IdmbGKeE
>>774
短期の逆張りで重要なのは乖離率だと思います。乖離率がきつければきついほど反発しやすくなるのは当然ですが、その時の地合によって買うべき乖離率の水準はだいぶ違ってきます。01年や02年の相場では25日移動平均線からのマイナス乖離が最低20%安心して買えるのは35%以上の乖離率という感じでした。35%乖離した株を買い反発したところで売りその段階でその株の乖離率は15%前後になりしばらくするとまた30%以上の乖離率の水準まで落ちてまた反発狙いで買いの繰り返しでした。短期の逆張り専門の人には天国のような相場だったと思います。
彼の残した移動平均乖離率を利用した逆張り手法は別記事にて。